健康な歯を抜きたくない。そう考えて、抜かずにできる医院を探している。
自然な気持ちだと思います。抜いた歯は戻らないので、避けたいと考えるのは当然です。
ただ、「非抜歯 後悔」で調べているということは、その選択に不安もあるということだと思います。
先に、この記事でお伝えしたいことを書きます。非抜歯という選択が問題なのではありません。適応の範囲内であれば、抜かずに済ませることは妥当な選択です。問題になるのは、必要な量が範囲を超えているのに、希望で通してしまう場合です。
そして、その範囲は数値で決まっています。
非抜歯の後悔は、終わってから出る
抜歯と非抜歯では、後悔が出る時期が違います。ここを先に押さえておきたいところです。
| 後悔の中身 | 出る時期 | |
|---|---|---|
| 抜歯を選んだ場合 | 健康な歯を抜いてしまった | 治療の初期。抜いた直後から意識される |
| 非抜歯を選んだ場合 | 望んだ状態にならなかった | 治療が終わったあと。結果を見て初めて分かる |
抜歯の後悔は、不可逆な処置に対するものです。だから治療が始まってすぐに向き合うことになります。
一方、非抜歯の後悔は結果に対するものです。歯を並べ終えて、装置を外して、鏡を見たときに初めて「思っていたのと違う」と気づきます。
この違いが意味するのは、非抜歯の後悔を予防できるタイミングは、治療前しかないということです。終わってから気づいた場合、対応するにはやり直しになります。
非抜歯は「抜かない」選択ではなく「別の方法でスペースを作る」選択
ここが誤解されやすいところです。
歯が並びきらないのは、並べる場所が足りていないからです。抜歯は、その場所を作る方法のひとつにすぎません。抜かないということは、別の方法で場所を作るということです。
方法は主に3つあります。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 歯を細くする(IPR) | 歯と歯の間をわずかに削って隙間を作る |
| 歯列を横に広げる | 狭くなっている歯のアーチを広げる |
| 奥歯を後ろに動かす | 奥歯を後方へ移動させて前方に場所を作る |
それぞれの詳細と量については、削る処置はIPR(ディスキング)とは?矯正で作れるスペースには上限があるで扱っています。
そして、ここが本題です。これらを組み合わせても、作れる量には限界があります。
Oh my teeth の解説では、次のように説明されています。
「非抜歯矯正で口元を下げられる量には限界があり、一般的に平均2〜4mm程度が目安」
理由も明確です。同じ解説では「歯槽骨という明確な物理的限界がある」とされています。歯は骨の中に植わっているので、骨の外へは動かせません。
つまり非抜歯は「抜かずに何とかする方法」ではなく、2〜4mm程度の範囲で成立する方法だということになります。
起こりうる後悔の中身
上限を超える希望を非抜歯で通した場合、何が起きるのかを整理します。
① 口元が思ったより下がらなかった
いちばん多い形です。歯並びは整ったけれど、横から見た口元の印象が想像していたほど変わらなかった、というものです。
必要だった移動量が上限を超えていた場合、並べることはできても下げきることはできません。歯が並ぶことと、口元が下がることは別です。原因のタイプによって変わる範囲が違うことは口ゴボは矯正で治る?原因のタイプ別に治療法と抜歯の要否を解説で整理しています。
② かえって口元が前に出た
これは公式の解説でも明記されています。
「無理に歯を下げようとすると、かえって口元が突出したり、治療後に歯並びが元に戻る『後戻り』のリスクが高まります」
理屈はこうです。並べる場所が足りないまま歯を並べようとすると、歯列を前方や側方へ広げる方向で収めることになります。結果として、歯が前に出た状態で並ぶことがあります。
抜きたくないという希望が、望んでいた方向と逆の結果につながることがある、ということです。
③ 後戻りしやすかった
同じ解説にあるとおり、無理な移動は後戻りのリスクを高めます。骨の範囲を超えて広げた歯は、元の位置へ戻ろうとする力を強く受けます。
保定装置を使っても、そもそも無理のある位置に並べた場合は維持が難しくなります。後戻りの仕組みはリテーナーはなぜ必要?後戻りを起こす2つの力と種類の選び方で扱っています。
④ 結局あとから抜歯矯正をやり直すことになった
①〜③の結果として、あらためて抜歯を含む計画で治療し直すことがあります。この場合、両方の費用と期間がかかります。抜歯してから隙間を閉じる工程には年単位の時間がかかることは抜歯矯正で抜くのはどの歯?期間の大半を占める「隙間を閉じる工程」で扱いました。
抜きたくないという理由で選んだ結果、最終的に抜くことになる。これが非抜歯の後悔としてはもっとも重いものです。
「抜きたくない」は目的ではなく、手段の希望
ここまでを踏まえて、いちばん大事なところを書きます。
「抜かない」は、目的ではありません。
矯正を受ける目的は、歯並びや噛み合わせ、口元の状態を望む形にすることです。「抜かない」はその過程の話であって、目指す状態そのものではありません。
にもかかわらず、抜歯への抵抗が強いと、いつのまにか「抜かないこと」が目的になっていることがあります。そうなると、望む状態に届くかどうかの検討が後回しになります。
望む状態に届かなければ、抜かなくても目的は果たせていません。
ただし、誤解のないように書いておきます。非抜歯そのものが悪いという話ではありません。必要量が2〜4mmの範囲に収まるのであれば、抜かずに済ませることは合理的な選択です。健康な歯を残せるなら、そのほうがよいのは確かです。
そして、逆方向の後悔もあります。抜歯を選ぶと口元が下がる量の帯そのものが変わるため、今度は下がりすぎたと感じることがあります。両方向の後悔がどう繋がっているかは抜歯矯正は口元が引っ込みすぎる?下がる量は連続ではなく「2つの帯」に分かれるで扱っています。
問題は選択の順序です。必要量が先にあり、それに対して方法が決まります。「抜かない」を先に決めて、そこに必要量を合わせようとすると無理が出ます。
抜歯の要否がどう判断されるか、医院によって判断が分かれるのはなぜかは矯正で抜歯が必要と言われる理由|医院によって判断が分かれるのはなぜかで整理しています。
治療前に確認しておくこと
後悔を減らすために、始める前に聞いておきたいことを挙げます。
自分の必要量は何mmか。並べるために足りていない量です。この数字が分からないと、非抜歯で足りるかどうかを判断できません。
非抜歯の計画で、口元がどれだけ下がる見込みか。目安は平均2〜4mm程度とされています。自分の計画ではどの程度なのかを確認します。
必要量が上限を超えている場合、何をどう組み合わせる計画か。3つの方法をどう配分するのか、それで足りるのかを聞いておきます。
計画どおりに動かなかったときの選択肢。途中で方針が変わる可能性があるか、その場合の費用と期間はどうなるかを確認しておきます。
通院先を大宮周辺で検討する場合は、通いやすさも判断材料になります。年単位の治療になることを考えると、通院の負担は現実的な条件です。なお通院の頻度は医院の方式によって差があり、来院を最低1回※からとしている方式もあります。
※通院回数は治療内容・個人の状態により異なります
よくある質問
非抜歯でやってくれる医院を探すのは間違いですか?
間違いではありません。健康な歯を残したいという希望は正当なもので、適応の範囲内であれば非抜歯は合理的な選択です。
ただし探し方の順序として、「非抜歯でやってくれるか」より先に「自分の必要量は何mmか」を知るほうが確実です。必要量が範囲内と分かれば、非抜歯を扱う医院を探す意味がはっきりします。範囲を超えていると分かれば、そもそも探す対象が変わります。
すでに非抜歯で治療して、納得できていません
まず現在の状態を評価してもらうところからです。並びきっていないのか、下がりきっていないのか、後戻りしているのかで対応が変わります。
追加の治療で対応できる範囲なのか、あらためて計画を組み直す必要があるのかは検査によります。治療を受けた医院に相談しにくい場合でも、状態の評価だけは受けておくと選択肢が見えます。
上限の2〜4mmは、誰にでも当てはまりますか?
目安として示されている数値です。実際に動かせる量は、骨の状態、歯の傾き、もともとの歯列の形によって変わります。自分の場合どうなのかは検査で判断されるものなので、この数字は「上限がある」ことを理解するための目安として使ってください。
歯列を広げるのは体に良くないのですか?
適応の範囲内で行うのであれば、歯列を広げること自体が問題というわけではありません。狭くなっているアーチを適切な形に整えるのは、治療の一部です。
問題になるのは、骨が許す範囲を超えて広げた場合です。歯を支える骨の外へ動かそうとすることになるため、後戻りのリスクが高まります。どこまでが範囲内かは検査で判断されます。
まとめ
非抜歯矯正の後悔は、治療が終わったあとに出ます。抜歯の後悔が治療初期に向き合うものであるのに対し、非抜歯の後悔は結果を見て初めて分かるからです。予防できるタイミングは治療前しかありません。
非抜歯は「抜かない」という選択ではなく、別の方法でスペースを作るという選択です。歯を細くする、歯列を広げる、奥歯を後ろに動かす、という方法がありますが、組み合わせても口元を下げられるのは平均2〜4mm程度が目安とされています。歯槽骨という物理的な限界があるためです。
上限を超える希望を通した場合、①下がりきらない ②かえって口元が前に出る ③後戻りしやすい ④結局あとから抜歯矯正をやり直す、といった結果が起こりえます。
大事なのは、「抜かない」は目的ではなく手段の希望だということです。望む状態に届かなければ、抜かなくても目的は果たせていません。
ただし非抜歯そのものが悪いわけではありません。必要量が範囲に収まるなら、健康な歯を残せる合理的な選択です。必要量が先にあり、方法は後から決まります。
まずは自分の必要量が何mmなのかを知るところから。検査とカウンセリングを無料で受けられる医院であれば、費用をかけずにその確認から始められます。