装置が外れて、ようやく終わった。そう思っていたところに、また別の装置を渡される。これから何年か使ってください、と言われる。
説明を聞いても、いまひとつ納得しきれない方は多いと思います。歯はもう並んでいるのに、なぜ固定し続ける必要があるのか。しかも「最初の数か月が特に大事」と言われる一方で、「2〜3年は続けてください」とも言われる。短期が大事なのか、長期が大事なのかが分かりません。
この一見矛盾する説明には理由があります。後戻りを起こす力が2つあり、それぞれ性質が違うからです。ここが分かると、リテーナーの位置づけがはっきりします。
リテーナーは矯正の続きであって、追加の装置ではない
まず前提の整理です。
矯正治療は、歯を動かす工程と、動かした位置に定着させる工程の2つでできています。後者を保定と呼び、そのために使う装置がリテーナーです。
つまりリテーナーは、治療が終わったあとのケア用品ではありません。治療の後半そのものです。前半だけで止めると、そこまでの工程が活きないという関係にあります。
この位置づけを知っておくと、次の説明が入りやすくなります。
後戻りを起こす力は2つある
歯が元の位置に戻ろうとする力には、性質の異なる2つの源があります。
| 力の源 | 性質 |
|---|---|
| 歯ぐきの繊維 | 引き伸ばされた状態から元の長さに縮もうとする。ゴムのような弾性 |
| 歯を支える骨 | 新しい位置で硬く安定するまでに時間がかかる。年単位のプロセス |
歯ぐきの繊維は、歯と歯ぐきをつないでいる組織です。矯正で歯が動くと、この繊維は引き伸ばされます。伸ばされたゴムが縮もうとするように、繊維も元の長さに戻ろうとします。この力は、歯が動いた直後から働いています。
骨のほうは事情が違います。歯を動かすと、歯を支える骨は新しい形につくり変えられていきます。ただしこの再構築が完了して、しっかり硬くなるまでには年単位の時間がかかるとされています。
この2つの性質の違いが、冒頭の疑問への答えになります。
だから「外した直後」がもっとも動きやすい
繊維の縮む力は、装置を外した瞬間から働いています。一方、骨のほうはまだ固まりきっていません。
つまり装置を外した直後は、戻そうとする力が強く、支える側が弱いという、もっとも不安定な時期にあたります。最初の数か月の装着時間が特に重視されるのは、このためです。
そして骨が安定するには年単位かかるため、長期間にわたって保定を続ける必要も同時に生じます。短期も大事で、長期も大事、という説明はここから来ています。矛盾ではなく、別々の理由が重なっているということです。
なお、装置を外してから10年といった長い期間で歯並びが変わる場合、後戻りだけでなく加齢にともなう変化も加わります。その切り分けについては矯正から10年で歯が動いた?後戻りと加齢による変化は分けて考えるで整理しています。
また、装着をどこまで続けるのか、どう減らしていくのかについてはリテーナーはいつまで?「やめる」のではなく段階的に減らしていくもので整理しています。
リテーナーの種類
リテーナーにはいくつかの型があり、それぞれ性格が違います。
| 種類 | 特徴 | 向いている条件 |
|---|---|---|
| マウスピース型 | 透明で歯列全体を覆う | 見た目を抑えたい。装着の習慣をつくれる |
| プレート型 | 樹脂の床とワイヤーで支える | 耐久性を重視したい |
| 固定式 | 歯の裏側にワイヤーを接着する | 外し忘れを避けたい |
取り外し式(マウスピース型・プレート型)は、清掃がしやすく、必要に応じて外せます。その代わり、装着するかどうかが本人に委ねられます。
どれが適するかは、歯並びの状態と生活の条件によって変わります。見た目を優先するのか、外し忘れを避けたいのか、清掃のしやすさを取るのか。担当医と相談して決める部分です。
なお、取り外し式と固定式を組み合わせて使うこともあります。
期間の目安
保定期間は、一般的に2〜3年程度とされることが多くなっています。
ただしこれは目安で、実際には個人差が大きい部分です。どのくらい歯を動かしたか、もともとの歯並びがどうだったか、年齢はどうか。こうした条件によって、適切な期間は変わります。
進め方としては、最初は長時間、その後は段階的に装着時間を減らしていくのが一般的です。いきなりやめるのではなく、様子を見ながら間隔を空けていきます。
いつまで、どのくらいの時間つけるのかは、担当医の指示に従ってください。定期的に状態を確認しながら決めていくことになります。
装着が減るとどうなるか
気になるのは、つけ忘れた場合のことだと思います。
戻り方には段階があるとされています。数か月のうちは軽度のずれにとどまり、半年から1年ほどで噛み合わせの変化として現れ、さらに時間が経つと見た目にも分かるようになる、という進み方です。
したがって、数日つけ忘れたからすぐに元通りになる、というものではありません。ただし、期間が空くほど装置が入りにくくなり、無理に入れようとすると痛みが出たり、装置が合わなくなったりします。
もし大きく戻ってしまった場合、あらためて歯を動かす治療が必要になることがあります。時間も費用も追加でかかることになるため、避けられるならそのほうがよい、という位置づけです。
矯正治療でうまくいかない要因のうち、装着時間の管理は自分で対処できる側に入ります。この切り分けについてはマウスピース矯正の失敗例は2種類|自分で防げるものと診断で決まるもので取り上げています。
癖が残っていると保定だけでは足りない
もうひとつ、見落とされやすい点があります。
舌で前歯を押す癖や、口呼吸の習慣が残っていると、歯には同じ方向の力がかかり続けます。リテーナーで押さえていても、力の源そのものが残っているということです。
歯は弱い力でも長時間かかれば動くという性質があり、矯正が成り立つのもこの性質によるものです。日常の癖も、同じように働きます。
そのため、癖が関わっていると判断された場合は、保定と並行して癖への対処も進めることになります。この考え方は口ゴボの治し方は原因で決まる|セルフケアで変わる部分と変わらない部分で整理しています。
費用に含まれているかを確認する
実務的な話として、費用の扱いを確認しておいてください。
矯正治療の表示価格には、保定装置の費用が含まれている場合と、別途になっている場合があります。装置代だけを見て比べると、後から差が出ることになります。
確認しておきたいのは次の2点です。
保定装置は総額に含まれるか。含まれない場合、いくらかかるのか。
紛失や破損で作り直す場合の費用。取り外し式は、外して置いた場所を忘れる、誤って捨ててしまうといったことが起こり得ます。再製作の費用がいくらかは、先に聞いておくと安心です。
総額の見方についてはマウスピース矯正の値段はいくら?相場と内訳、総額の見方を解説で整理しています。
治療を始める前に確認したいこと
リテーナーは治療の後半にあたるため、始める前に条件を確認しておくほうが確実です。
どの種類の保定装置を使う予定か。取り外し式か固定式か、あるいは組み合わせか。
費用に含まれるか、別途か。含まれない場合の金額。
再製作の費用。紛失・破損したときの扱い。
保定期間中の通院の頻度。定期的な確認がどのくらいの間隔で必要か。
精密検査やカウンセリングを無料としている医院であれば、費用をかけずにここまで確認できます。契約前に聞いておく項目として押さえておいてください。
通院先を大宮周辺で検討する場合は、通いやすさも判断材料になります。保定期間を含めれば、通う年数はさらに長くなります。なお通院の頻度は医院の方式によって差があり、来院を最低1回※からとしている方式もあります。
※通院回数は治療内容・個人の状態により異なります
よくある質問
リテーナーは一生つけ続けるのですか?
一般的には2〜3年程度が目安とされ、段階的に装着時間を減らしていきます。ただし歯並びの状態によっては、就寝時のみといった形で長く続けることをすすめられる場合もあります。どう進めるかは担当医の指示によります。
何日か忘れてしまいました。どうすればいいですか?
まずは装着を再開して、入るかどうか確かめてください。きつく感じても入るようであれば、そのまま指示どおりに続けます。入らない、あるいは強い痛みが出る場合は、無理に入れずに医院へ相談してください。
入らなくなってしまった場合は?
歯の位置が変わっている可能性があります。無理に装着すると装置が壊れたり、歯に想定外の力がかかったりすることがあります。早めに医院に連絡して、状態を確認してもらってください。
固定式と取り外し式では、どちらがいいですか?
一概には言えません。固定式は外し忘れが起こらない一方、清掃に手間がかかります。取り外し式は清掃がしやすい反面、装着を自分で管理する必要があります。歯並びの状態と生活の条件によって適する方が変わるため、担当医と相談して決めることになります。
まとめ
リテーナーは治療のあとに追加される装置ではなく、歯を動かす工程に続く後半の工程です。
歯が戻ろうとする力には、性質の違う2つの源があります。歯ぐきの繊維が元の長さに縮もうとする力と、歯を支える骨が新しい位置で安定するまでに時間がかかることです。
繊維の力は装置を外した直後から働き、骨は年単位でしか固まりません。そのため、外した直後がもっとも不安定でありながら、長期間の保定も必要になるという状況が生まれます。短期も長期も大事という説明は、この2つが重なっているためです。
種類には取り外し式と固定式があり、見た目・清掃・外し忘れといった条件で向き不向きが変わります。期間の目安は2〜3年程度とされますが個人差が大きく、担当医の指示に従うことになります。
そして癖が残っていれば、保定だけでは力の源が残ります。費用に保定装置が含まれるかどうかも、契約前に確認しておきたい項目です。
矯正を検討する段階から、保定まで含めた条件を確かめておくと、後から想定とずれることを防げます。検査とカウンセリングを無料で受けられる医院であれば、費用をかけずに相談できます。