「口ゴボ 治し方」で調べると、たいていの記事が同じ流れになっています。自力で治すことはできませんと書いたあと、舌の位置や口周りの筋肉のトレーニングを紹介し、最後に矯正治療をすすめる。
読み終わって、こう思った方も多いのではないでしょうか。治せないなら、紹介されているセルフケアは何のためにあるのか。
この引っかかりには、はっきりした答えがあります。セルフケアは治すためのものではなく、悪化と後戻りを防ぐためのものだからです。目的が違うだけで、無意味というわけではありません。
ここでは、口ゴボの原因を3つの層に分けたうえで、それぞれにどの手段が届くのかを整理します。セルフケアの位置づけも、そのなかで説明します。
「治し方」を決める前に、原因の層を知る
口ゴボは、口元が前に出て見える状態を指す言葉です。医学的な診断名ではなく、見た目をあらわす呼び方です。
原因は、大きく3つの層に分かれます。
| 原因の層 | 届く手段 | 届かない手段 |
|---|---|---|
| 癖(口呼吸・舌で歯を押す・唇を噛む) | 癖への対処、口腔筋機能療法など | — |
| 歯の傾き(前歯が前方に傾いている) | 歯を動かす矯正治療 | セルフケア |
| 骨格(顎の骨の位置関係) | 外科的な処置を含む方法 | セルフケア、歯の移動のみ |
ここで押さえておきたいのは、手段は層をまたげないという点です。骨格が原因の状態に舌のトレーニングをしても骨の位置は変わりませんし、癖が残ったまま歯だけ動かしても力はかかり続けます。
そして実際には、複数の層が重なっていることが少なくありません。癖があって歯が傾き、骨格の要素も少し関わっている、といった具合です。
セルフケアで変わる部分と変わらない部分
では、セルフケアはどの層に届くのか。整理すると次のようになります。
変わらないものは、歯の傾きと骨格の位置です。すでに動いてしまった歯の角度は、トレーニングで元に戻るものではありません。骨の位置関係も同様です。
変わり得るものは、歯にかかっている力の向きです。舌で前歯を押す癖があれば、歯は押される方向に力を受け続けます。口が開いた状態が習慣になっていれば、唇が歯を押さえる力が働きにくくなります。
つまりセルフケアは、口ゴボそのものを「治す」のではなく、口元にかかっている力の状態を変える取り組みだということです。ここを区別すると、位置づけがはっきりします。
よく挙がるセルフケアが何を狙っているのか
紹介されることの多い項目が、それぞれ何に働きかけるものなのかを見ておきます。
舌の位置。安静時の舌先は、上の前歯のやや後ろあたりに軽く触れている状態が望ましいとされています。舌が下がっていたり前歯を押していたりすると、歯に継続的な力がかかります。位置を意識することは、その力を減らす方向に働きます。
鼻呼吸。口が開いたままだと、唇が歯を外側から支える力が働きにくくなります。鼻で呼吸する習慣は、口元の筋肉の使い方に関わります。ただし鼻づまりなど呼吸そのものに原因がある場合は、耳鼻科での相談が先になることもあります。
口周りの筋肉。唇を閉じる筋肉が弱いと、口を閉じた状態を保ちにくくなります。歯科では口腔筋機能療法(MFT)として指導されることがあります。
いずれも変化の程度には個人差があります。また自己流で強い力をかけると、かえって別の負担になることもあるため、指導を受けたうえで行うほうが確実です。
セルフケアの役割は、治療の前と後で変わる
ここが本記事でもっとも伝えたい部分です。
セルフケアは、単独では口ゴボを改善する手段になりません。ただし治療の前と後で、まったく違う役割を持ちます。
治療を受ける前は、進行させる要因を止めるという意味があります。癖によって歯に力がかかり続けている状態なら、それを放っておく理由はありません。矯正を始めるかどうか迷っている期間も、この対処は先に進められます。
治療を受けたあとは、より重要になります。歯を動かして口元が変わっても、同じ癖が残っていれば同じ方向の力がかかり続けます。歯は弱い力でも長時間かかれば動くという性質があり、矯正が成り立つのもこの性質によるものです。裏を返せば、日常の癖も同じように働きます。
矯正治療のあとは、後戻りを防ぐために保定装置を使います。癖への対処は、その保定と並んで再発を防ぐ側に働きます。癖が残ると戻る要因になるという点については、下唇が出てるのはなぜ?受け口とは限らない4つの原因と見分け方でも取り上げています。
セルフケアは治療の代わりにはなりませんが、治療の結果を保つ側では意味を持つ。これが、多くの記事で説明されないまま並んでいた部分の答えです。
歯を動かす方法で変わる範囲
歯の傾きが原因の層に当たる場合は、矯正治療が対象になります。
前歯が前方に傾いていることで口元が押し出されているなら、その角度を後ろに倒すことで印象が変わる可能性があります。
ただし歯を後ろに動かすには、そのためのスペースが要ります。スペースをどう作るかが、治療計画の分かれ目です。歯を抜いて場所を作る方法、歯の側面をわずかに削って全体の幅を詰める方法、奥歯を後ろに動かす方法などがあり、どれが適するかは必要な移動量によって変わります。
どこまで変わるのか、抜歯が要るのかどうかについては、口ゴボは矯正で治る?原因のタイプ別に治療法と抜歯の要否を解説で詳しく整理しています。
なお、前歯を中心とした範囲に限定する治療もありますが、口ゴボでは奥歯を含めた調整が必要になることが多いため、範囲を絞る方法では届かない場合があります。前歯を中心とした矯正で対応できる範囲はマウスピース矯正は前歯だけできる?費用・期間と適応の条件を解説で取り上げています。
骨格が原因の場合の選択肢
顎の骨の位置関係そのものが口元の印象を作っている場合、歯を並べ替えても土台は動きません。歯の傾きを調整して見た目がいくらか変わることはありますが、程度が大きい場合には限りがあります。
この場合、顎の位置関係を変える外科的な処置を組み合わせる方法が検討されることがあります。身体への負担を伴うため、どこまでの改善を望むかとあわせて慎重に判断される領域です。
なお、歯科以外の分野でも口元の見た目に働きかける方法はありますが、対象も考え方も異なります。歯並びや噛み合わせが関わっているかどうかを先に確かめておくと、どの分野に相談すべきかが整理できます。
何が変われば満足かを、先に決めておく
手段を選ぶ前に、決めておいたほうがよいことがあります。自分は何が変われば満足なのかです。
- 横から見たときの口元の突出感が気になる
- 力を入れないと唇が閉じにくい
- 写真に写る横顔のラインを変えたい
- 噛み合わせも含めて整えたい
これらは似ているようで、必要な治療の範囲が変わります。たとえば「口元が引っ込めばいい」のと「噛み合わせも整えたい」のとでは、動かす歯の本数も期間も違ってきます。
相談の場で「口ゴボを治したい」とだけ伝えると、話が抽象的なままになりがちです。何が気になっているのかを具体的に言えると、提案される計画も具体的になります。
原因を確かめる方法と、相談時に聞くこと
どの層に原因があるかは、鏡や写真では分かりません。骨の位置も歯根の状態も、外からは見えないためです。判断にはレントゲンによる確認が要ります。
相談の際に確認しておきたいのは次の点です。
どの層が主な原因と診断されたか、その根拠。複数が重なっている場合は、その割合の見立ても聞いておきます。
その原因に届く手段は何か。歯を動かす範囲で足りるのか、それを超えるのか。
見込める変化の程度。原因によって、どこまで変えられるかが変わります。
癖が関わっているか。自分では気づいていない癖を指摘してもらえることがあります。
精密検査やカウンセリングを無料としている医院であれば、費用をかけずに原因の切り分けまで進められます。治療を決める前に、分類だけ確かめるという使い方ができます。
通院先を大宮周辺で検討する場合は、通いやすさも判断材料になります。治療が年単位に及ぶ場合はなおさらです。なお通院の頻度は医院の方式によって差があり、来院を最低1回※からとしている方式もあります。
※通院回数は治療内容・個人の状態により異なります
よくある質問
セルフケアだけで口ゴボは改善しますか?
歯の傾きや骨格の位置が関わっている場合、セルフケアだけで変えることは難しくなります。ただし癖によって力がかかり続けている状態を減らす意味はあり、治療後の再発を防ぐ側でも働きます。役割が違うものと捉えてください。
舌の位置を直すと、どのくらいで変化しますか?
変化の程度も速さも個人差が大きく、期間の目安を示すことはできません。またすでに動いた歯の角度が戻るわけではありません。どの程度期待できるかは、原因の層によって変わります。
自分が口ゴボかどうか、どう判断すればいいですか?
口ゴボは見た目をあらわす言葉のため、明確な線引きがあるわけではありません。気になるかどうかが出発点になります。ただし原因の切り分けは自己判断ではできないため、検査を受けたうえで確認することになります。
治療するとしたら費用はどのくらいですか?
動かす範囲と方法によって幅があります。装置の料金だけでなく、検査費・調整費・保定装置まで含めた総額で比べることが大切です。内訳の見方はマウスピース矯正の値段はいくら?相場と内訳、総額の見方を解説で整理しています。
まとめ
口ゴボの原因は、癖・歯の傾き・骨格という3つの層に分かれます。そして手段は層をまたげません。どの層に原因があるかで、届く方法が決まります。
セルフケアで変えられるのは、歯の傾きや骨格ではなく、歯にかかっている力の状態です。「治せない」と書かれることが多いのはそのためですが、無意味というわけではありません。治療前は進行させる要因を止め、治療後は後戻りを防ぐ側に働きます。役割が違うだけです。
歯の傾きが原因であれば矯正治療の対象になり、スペースの作り方が計画の分かれ目になります。骨格が主な原因であれば、外科的な処置を含む方法が選択肢に入ります。
そして手段を選ぶ前に、何が変われば満足なのかを言葉にしておいてください。それが決まると、相談の内容が具体的になります。
どの層に当たるかは、レントゲンを含む検査を受けて初めて分かります。検査とカウンセリングを無料で受けられる医院であれば、費用をかけずに切り分けから始められます。