横顔の写真をふと見て、下唇が前に出ていることに気づく。一度気になり始めると、鏡を見るたびに目がいってしまいます。
原因を調べていくと、出てくるのは受け口や下顎前突(かがくぜんとつ)の解説ばかりです。ただ、噛み合わせで困ったことはないし、前歯も普通に噛み合っている気がする。そうなると、自分に当てはまる説明が見つからないまま止まってしまいます。
実は、下唇が前に出て見える原因は受け口だけではありません。骨格、口周りの癖、歯並び、そして加齢による変化と、いくつかの可能性があります。しかも原因が下唇ではなく上の歯にあることさえあります。
ここでは4つの原因を整理したうえで、受け口かどうかの見分け方と、原因別の対処を説明します。
下唇が出て見える原因は4つに分けられる
まず全体像です。
骨格によるもの。下顎の骨が上顎に対して前に位置している場合です。歯ではなく土台の位置関係が印象を作っています。
口周りの癖によるもの。口呼吸、舌で歯を押す癖、下唇を噛んだり巻き込んだりする癖などです。日常的に力がかかることで、歯や口元の位置に影響することがあります。
歯並びによるもの。前歯の傾きが口元の形を作っています。ここで見落とされやすいのが、下の歯ではなく上の歯が関わっているケースです。後ほど詳しく取り上げます。
加齢による変化。口周りの組織は年齢とともに変化します。ただしこれは誰にでも起こる自然な変化であり、それ自体が問題というわけではありません。
重要なのは、この4つで対処の方向がまったく違うことです。だからこそ、何が原因かを切り分けるところから始まります。
骨格が原因の場合
下顎の骨そのものが上顎より前に位置している場合です。下顎前突と呼ばれる状態が該当します。
このケースでは、歯を並べ替えても土台となる骨の位置は変わりません。歯の傾きを調整することで見た目がいくらか変わることはありますが、程度が大きい場合には限りがあります。
程度によっては、顎の位置関係を変える外科的な処置を組み合わせる方法が検討されることもあります。身体への負担を伴うため、どこまでの改善を望むかとあわせて慎重に判断されます。
骨格が原因かどうかの考え方については、口ゴボは矯正で治る?原因のタイプ別に治療法と抜歯の要否を解説でも取り上げています。歯性か骨格性かという分類の考え方は共通です。
口周りの癖が原因の場合
見落とされやすいのがこのタイプです。
口呼吸が習慣になっていると、口が開いた状態が続き、口周りの筋肉の使い方が変わります。舌で前歯を押す癖は、歯に継続的な力をかけます。下唇を噛む、巻き込むといった癖も同様です。
歯は、弱い力でも長時間かかり続けると動きます。矯正治療が成り立つのもこの性質によるものです。裏を返せば、日常的な癖も同じように影響し得るということになります。
ここで大切なのが、癖が残ったままだと、歯を動かしても元に戻る要因になるという点です。装置で歯を並べても、同じ力がかかり続ければ、時間とともに戻る方向に働きます。
そのため、癖が関わっていると判断された場合は、原因への対処と歯の移動をセットで考えることになります。どういう対処が適しているかは状態によって異なるため、診断を受けたうえで指導を受けてください。
なお、癖は自分では気づきにくいものです。無意識に行っていることが多く、指摘されて初めて自覚するというケースは珍しくありません。
原因が「上の歯」にあることもある
ここが本記事でもっとも伝えたい部分です。
下唇が出て見えるのに、原因が下側にあるとは限りません。上の前歯が内側に傾いていると、上唇を支える力が弱まります。上唇が支えを失って引っ込むと、相対的に下唇が前に出て見えるようになります。
つまり、下唇そのものの位置は変わっていないのに、上の歯並びが見た目を作っていることがあるということです。
このケースでは、上の前歯の傾きを整えることで印象が変わる可能性があります。下唇を引っ込めようとするのではなく、上側を前に出す方向の調整になります。対処の方向が、直感とは逆になるわけです。
鏡で下唇だけを見ていても原因にたどり着けない理由がここにあります。口元の見た目は上下のバランスで決まるため、片方だけを見ても判断できません。
自分がこのケースに当たるかどうかは、上下の歯の傾きと骨の位置関係を確認して初めて分かります。
受け口かどうかの見分け方
そもそも自分は受け口なのか。ここを整理しておきます。
受け口(反対咬合)は、前歯を噛み合わせたときに、下の前歯が上の前歯より前に出ている状態を指します。通常は上の前歯が下の前歯を覆いますが、これが逆転している状態です。
軽く噛み合わせたときに上の前歯が下の前歯の外側にあるなら、噛み合わせは逆転していないことになります。その場合、下唇が出て見えていても受け口ではない可能性があります。
ただし、これはあくまで目安です。軽度のずれは見た目で判断しにくく、部分的に逆になっているケースもあります。自己判断で結論を出すことはできません。
噛み合わせが逆転している場合の治療については、反対咬合はマウスピース矯正で治る?3つのタイプと対応できる範囲で取り上げています。
また、下唇だけでなく口元全体が前に出ていると感じる場合は、口ゴボと呼ばれる状態に近いかもしれません。その場合は口ゴボは矯正で治る?原因のタイプ別に治療法と抜歯の要否を解説が参考になります。
原因別の対処と確かめ方
ここまでの内容を整理します。
| 原因 | 主な対処の方向 |
|---|---|
| 骨格 | 歯の移動だけでは限りがある。程度により外科的な処置を含む方法を検討 |
| 口周りの癖 | 癖への対処と歯の移動をあわせて考える |
| 歯並び(上の前歯の傾きを含む) | 歯を動かす矯正の対象になりやすい |
| 加齢による変化 | 歯並びの要素が関わっていれば矯正が選択肢になる |
共通しているのは、レントゲンで骨と歯の位置関係を確認しないと分類できないという点です。写真や鏡では、骨の位置も歯根の状態も分かりません。
相談の際に確認しておきたいのは次の点です。
どの原因と診断されたか、その根拠。複数の要素が複合していることもあります。
癖の有無。自分では気づいていない癖を指摘してもらえることがあります。
見込める変化の程度。原因によって、どこまで変えられるかが変わります。
精密検査やカウンセリングを無料としている医院であれば、費用をかけずに原因の確認まで進められます。相談するほどのことか迷っている段階でも、確かめるだけという使い方ができます。
通院先を大宮周辺で検討する場合は、通いやすさも判断材料になります。なお通院の頻度は医院の方式によって差があり、来院を最低1回※からとしている方式もあります。
※通院回数は治療内容・個人の状態により異なります
よくある質問
下唇が出ているのは治せますか?
原因によります。歯の傾きが関わっている場合は、歯を動かす矯正で印象が変わる可能性があります。骨格の位置関係が主な原因の場合は、歯の移動だけでは限りがあります。まず何が原因かを確かめることが出発点になります。
癖を直せば自然に戻りますか?
癖への対処は、歯が動く方向に働く力を減らすうえで意味があります。ただし、すでに歯の位置が変わっている場合、癖をやめただけで元の位置に戻るとは限りません。どの程度の変化が見込めるかは状態によるため、診断を受けたうえで判断してください。
マウスピース矯正で対応できますか?
歯の傾きが原因で、必要な移動量が範囲内であれば対応できる可能性があります。骨格の位置関係が主な原因の場合は、マウスピース矯正では対応が難しくなります。適応の判断は精密検査によります。
治療にはどのくらい期間がかかりますか?
原因と必要な移動量によって変わります。前歯の傾きの調整が中心であれば比較的短く済むこともありますが、範囲が広い場合や外科的な処置を伴う場合は年単位になることが一般的です(いずれも後戻りを防ぐ保定期間を除く)。
まとめ
下唇が前に出て見える原因は、骨格、口周りの癖、歯並び、加齢による変化の4つに分けられます。受け口とは限りません。噛み合わせが逆転していなければ、別の原因が関わっている可能性があります。
とくに知っておきたいのが、上の前歯が内側に傾いていることで、相対的に下唇が目立つケースがあることです。原因が下側にあるとは限らないため、鏡で下唇だけを見ていても答えにはたどり着きません。
癖が関わっている場合は、歯を動かすだけでは戻る要因が残ります。原因への対処とあわせて考える必要があります。
どの原因に当たるかは、レントゲンを含む検査を受けて初めて分かります。検査とカウンセリングを無料で受けられる医院であれば、費用をかけずに確かめるところから始められます。