歯科で「噛み合わせが良くない」と言われた。でも自分では歯並びが悪いと思っていない。
あるいは、噛みにくい、片側でばかり噛んでしまう、前歯で麺が噛み切れない。そういう違和感があって調べている。
どちらの場合も、最初に押さえておくと理解が変わることがあります。「歯並び」と「噛み合わせ」は、別のものを指しているということです。
「歯並び」と「噛み合わせ」は別の軸
言葉としては近いのですが、見ている対象が違います。
| 用語 | 指しているもの |
|---|---|
| 歯並び | 一つの顎の中での歯の配列。上なら上だけ、下なら下だけで見た並び方 |
| 噛み合わせ | 上下の歯の関係。噛んだときにどう当たるか |
鏡で口を開けて見えるのは、主に歯並びのほうです。上の歯が揃っているか、ガタついていないか。
一方、噛み合わせは上下を合わせて初めて評価できるものです。口を開けた状態では分かりません。
だから、こういうことが起こります。
歯並びは整っているのに、噛み合わせに問題がある。
上下それぞれはきれいに並んでいても、噛んだときの当たり方が適切でないことがあります。「歯並びは悪くないのに指摘された」という状況は、この場合にあたります。
噛み合わせの7つのタイプ
噛み合わせの状態は、大きく7つに分けられます。
| タイプ | 状態 |
|---|---|
| 上顎前突(出っ歯) | 上の前歯が前方に大きく突き出ている |
| 下顎前突(受け口) | 下の歯が上の歯よりも前に出ている |
| 叢生(ガタガタ) | 歯が重なり合って生えている |
| 空隙歯列(すきっ歯) | 歯と歯の間にすき間がある |
| 開咬 | 上下の前歯が噛み合わず、すき間が空く |
| 過蓋咬合 | 上の前歯が下の前歯を大きく覆い隠している |
| 交叉咬合 | 上下の歯列の一部が左右にずれて噛み合っている |
このうち、当サイトで個別に扱っているものは次のとおりです。上顎前突は出っ歯はマウスピース矯正で治せる?適応を分けるのは「下げる場所」があるか、下顎前突は受け口の矯正は何で決まる?原因と成長という2つの軸で選択肢が変わる、叢生については八重歯の矯正で抜くのは八重歯ではない|犬歯の役割とスペース不足という原因、過蓋咬合は噛み合わせが深いとマウスピース矯正は難しい?縦方向の動きと期間の関係で扱っています。
見た目で気づけるものと、気づけないもの
7つを別の切り口で分けると、性質の違いが見えてきます。
| 見た目で気づきやすい | 見た目では気づきにくい |
|---|---|
| 叢生/上顎前突/下顎前突/空隙歯列 | 開咬/過蓋咬合/交叉咬合 |
左側は、正面から見たときに分かります。歯が重なっている、前に出ている、すき間がある。自分で気づいて受診することが多いタイプです。
右側は事情が違います。順に見ていきます。
開咬は、奥歯で噛んだときに前歯が当たらない状態です。上下それぞれの並びは整っていることがあり、正面から見ただけでは分かりにくいことがあります。前歯で食べ物を噛み切りにくい、話すときに息が漏れやすい、といった形で気づくことがあります。
過蓋咬合は、噛んだときに上の前歯が下の前歯を深く覆う状態です。上の歯だけを見ればきれいに並んでいるので、鏡では気づきにくいタイプです。下の前歯が見えないほど隠れる場合もあります。
交叉咬合は、上下の歯列の一部が左右にずれて噛み合っている状態です。全体ではなく一部だけずれていることがあり、片側でばかり噛む癖につながることがあります。
つまり、見た目で気づきにくいタイプほど、上下の関係そのものが崩れているということになります。歯並びの軸では捉えられないものが、こちら側に集まっています。
噛み合わせが機能に関わる理由
噛み合わせが問題になるのは、見た目のためではなく機能のためです。説明のつく範囲で整理します。
噛む効率。噛むという動作は、前歯で噛み切り、奥歯ですりつぶす、という役割分担で成り立っています。上下の当たり方が合っていないと、この分担が崩れます。前歯が当たらなければ噛み切れませんし、奥歯の接触が少なければすりつぶす効率が落ちます。
清掃のしやすさ。歯が重なっている部分は、歯ブラシが届きにくくなります。磨き残しが出やすい場所ができると、虫歯や歯周病のリスクに関わります。
歯にかかる力の偏り。上下が均等に当たらないと、一部の歯に力が集中します。長期間続くと、その歯がすり減ったり、欠けたりすることがあります。
顎の関節への負担。噛み合わせの状態によっては、顎を動かすときに関節へ負担がかかることがあります。口を開け閉めするときに音が鳴る、痛みがあるといった症状が出ている場合は、そのままにせず歯科で診てもらってください。
「歯並びだけ直したい」のに噛み合わせの話をされる理由
相談に行くと、自分が気にしていない部分の説明を受けることがあります。「前歯のガタつきを直したい」と伝えたのに、奥歯の噛み合わせの話が始まる、というような場面です。
これは、見ている軸が違うために起こります。
多くの人は見た目で受診します。気になっているのは歯並びの軸です。一方、検査では上下の関係も評価されます。そこで噛み合わせの軸の問題が見つかると、そちらの説明が入ります。
このとき「余計なことを言われた」と感じてしまうと、話が噛み合いません。別の軸を見ているのだと分かっていれば、聞き方が変わります。
そして実務的にも、この違いは効いてきます。範囲を限定した治療を希望しても、噛み合わせの側から適応外と判断されることがあるためです。その判断がどう行われるかは部分矯正ができない例とは?断られる理由と言われたあとの選択肢で扱っています。
治療法はタイプによって決まる
どの装置を使うかは、希望ではなく必要な移動の量と方向によって決まります。上下の関係を大きく変える必要があるのか、配列を整えるだけで足りるのかで、選べる方法が変わります。
装置がどう決まるかの考え方は歯科矯正でマウスピースを選べるのはどんなとき?装置の決まり方を解説で整理しています。
なお、治療が始まると途中で噛み合わせの感じが変わります。これは計画上の通過点であることが多いのですが、様子を見てよい範囲と相談すべき症状の線引きはマウスピース矯正中に噛み合わせが変わった?様子を見てよい変化と受診の目安でまとめています。
通院先を大宮周辺で検討する場合は、通いやすさも判断材料になります。なお通院の頻度は医院の方式によって差があり、来院を最低1回※からとしている方式もあります。
※通院回数は治療内容・個人の状態により異なります
よくある質問
歯並びはきれいだと言われますが、噛み合わせが悪いと言われました
その2つは別の軸なので、両立します。上下それぞれの配列が整っていても、合わせたときの関係が適切でないことがあります。開咬・過蓋咬合・交叉咬合は、まさにこの形で見つかることが多いタイプです。
噛み合わせだけを治すことはできますか?
上下の関係を変えるには、歯の位置を動かすことになります。つまり歯並びの側にも変化が及びます。噛み合わせだけを独立して調整する、という形にはなりにくいということです。どこまで動かす必要があるかは検査で判断されます。
自分で噛み合わせをチェックできますか?
おおよその見当はつきます。軽く噛んだ状態で、前歯が当たっているか、下の前歯がどのくらい隠れるか、左右のずれがないかを鏡で見てみてください。ただし、上下の関係は口を開けた状態では評価できません。自分で分かるのは目安までで、正確な評価には検査が要ります。
片側でばかり噛んでいるのは噛み合わせのせいですか?
噛み合わせが関係していることがあります。片側だけ当たりが強い、あるいは反対側が当たりにくいと、噛みやすいほうを使うようになります。ただし、虫歯や歯の欠損など別の理由で片側を避けていることもあります。原因は診てもらって判断する形になります。
まとめ
「歯並び」と「噛み合わせ」は別の軸です。歯並びは一つの顎の中での配列、噛み合わせは上下の歯の関係を指します。だから、歯並びが整っていても噛み合わせに問題があることがあります。
噛み合わせの状態は、上顎前突・下顎前突・叢生・空隙歯列・開咬・過蓋咬合・交叉咬合の7つに分けられます。
このうち、開咬・過蓋咬合・交叉咬合は見た目で気づきにくいタイプです。正面から見て歯が揃っていても、上下の関係が崩れていることがあります。気づきにくいものほど、上下の関係そのものに関わっていると言えます。
噛み合わせが問題になるのは、噛む効率、清掃のしやすさ、歯にかかる力の偏り、顎の関節への負担といった機能面に関わるためです。
「歯並びだけ直したい」という希望に対して噛み合わせの話が返ってくるのは、別の軸を見ているからです。そこが分かると、相談の内容が理解しやすくなります。
自分の噛み合わせがどのタイプかは、上下を合わせた状態で評価しないと分かりません。検査とカウンセリングを無料で受けられる医院であれば、費用をかけずに現状の確認から始められます。