部分矯正と全体矯正、どちらにするか。値段が倍以上違うので、部分で済むならそのほうがいい——そう考えて調べている方が多いと思います。
ただ、この2つは動かす歯の本数が違うだけの治療ではありません。
扱っている対象そのものが違います。そこが分かると、選べる場面とそうでない場面の区別がつきます。
分かれているのは「見た目」と「噛み合わせ」
公開されている解説では、それぞれこう説明されています。
部分矯正——「見た目の改善に特化した治療法であるため、噛み合わせ全体のバランスを整えることは難しい」
全体矯正——「上下の歯のバランスを総合的に調整できるため、見た目の改善だけでなく、正しい噛み合わせ(咬合)の獲得にもつながります」
つまり分岐しているのは範囲の広さではなく、噛み合わせを設計に含めるかどうかです。
部分矯正は前歯の並びを整えます。全体矯正は、上下の歯がどう噛み合うかまで含めて動かします。
費用の差は、この違いの結果です。 原因ではありません。安いから範囲が狭いのではなく、扱う対象が違うから費用が違います。
だから「安いほうを選ぶ」という判断は、実際には扱う対象を選んでいることになります。
費用と期間の目安
公開されている情報では、次のように整理されています。
| 費用の目安 | 期間の目安 | |
|---|---|---|
| 部分矯正 | 10万〜60万円程度(マウスピース矯正10万〜40万円/ワイヤー矯正30万〜70万円) | 短ければ3ヶ月程度 |
| 全体矯正 | 表側ワイヤー60万〜130万円程度/裏側100万〜170万円程度/マウスピース60万〜100万円程度 | 1〜3年程度 |
※これらは自由診療(保険適用外)です。いずれも装置で歯を動かす治療で、部分矯正は前歯など範囲を限って並びを整えるもの、全体矯正は噛み合わせを含めて歯列全体を整えるものです。標準的な費用と期間は上表のとおりで、症例により異なります。通院回数も治療内容と状態によって変わります。リスク・副作用として、装着中の痛みや違和感、発音のしにくさ、治療期間の延長や計画どおりに歯が動かないこと、治療後の後戻りが生じることがあります。また診断の結果、適応外と判断される場合があります。
期間の差にも注目してください。3ヶ月と1〜3年では、桁がひとつ違います。動かす量と、動かす対象の複雑さが違うためです。
部分矯正は後戻りしやすい傾向があるとされている
ここは知っておいたほうがいい点です。
公開されている解説では、部分矯正について「治療期間が短く、費用も抑えられる反面、治療できる歯並びが限られているため、後戻りしやすい傾向があります」とされています。
理解しておくと納得しやすい点があります。歯は、まわりから力を受けて今の位置にいます。噛み合わせもその力のひとつです。並びだけを変えて、噛み合わせの条件が変わらないままであれば、元の位置に引き戻す力は残ります。
後戻りを起こす力の中身はリテーナーはなぜ必要?後戻りを起こす2つの力と種類の選び方で扱っています。
これは部分矯正が悪いという話ではありません。保定の重要度が相対的に高くなる、という理解になります。
無理に部分で通すとどうなるか
公開されている解説には、はっきりした記述があります。
「適応外の歯並びを無理に部分矯正で動かしてしまうと、歯列全体にひずみが生じて、かえって歯並びが悪くなるケースも少なくありません」
範囲を限るということは、動かさない歯があるということです。動かさない歯との間で無理が生じれば、そこにしわ寄せが出ます。
どういう場合に適応から外れるのか、断られたときにどうするかは部分矯正ができない例とは?断られる理由と言われたあとの選択肢で扱っています。
部分矯正が成り立つ条件
否定的な話が続いたので、成り立つ側も書いておきます。
部分矯正が向くのは、噛み合わせに問題がなく、前歯の並びだけが気になっている場合です。前歯のわずかなすき間や、1本のねじれといった範囲がこれにあたります。
条件が合えば、期間も費用も明確に軽くなります。わざわざ全体で行う理由はありません。
問題になるのは、条件が合っていないのに範囲だけを縮めようとする場合です。とくに出っ歯のように「下げたい」という主訴の場合、下げるための空間が範囲内にあるかどうかが関わってきます。この点は出っ歯は部分矯正で治せる?「並べる」と「下げる」は別の治療で扱っています。
また、上下のどちらか片方だけに絞れるかという論点もあります。噛み合わせは上下の関係で成り立つため、片方を動かせばもう一方との関係が変わります。この点は下の歯だけの矯正は安く済む?「下だけで終わった人は5%」という数字の読み方で扱っています。
どちらかは、希望では決まらない
結論として、どちらを選ぶかは検査の結果で決まります。
噛み合わせに問題があるかどうかは、見た目では判断できません。並びが気になっていても噛み合わせは問題ないこともあれば、その逆もあります。噛み合わせの分類は噛み合わせは矯正で治せる?「歯並び」とは別の軸で見る7つのタイプで扱っています。
診断を受けたうえで、部分で成立するのかどうかを聞くことになります。両方の見積もりを出してもらえば、費用の差と、その差で何が変わるのかを並べて比べられます。
通院先を大宮周辺で検討する場合は、通いやすさも判断材料になります。なお通院の頻度は医院の方式によって差があり、来院を最低1回※からとしている方式もあります。
※通院回数は治療内容・個人の状態により異なります
よくある質問
予算の都合で部分矯正にしたいのですが、頼めばできますか?
医院によって対応は異なりますが、適応から外れている場合は断られることがあります。無理に範囲を縮めると歯列全体にひずみが生じるとされているためです。
予算が理由であれば、範囲を縮めるより支払い方法を相談するほうが筋が通ります。
部分矯正で始めて、あとから全体に切り替えられますか?
切り替え自体は行われることがあります。ただし両方の費用がかかることになるため、総額では最初から全体で行うより高くなることがあります。
始める前に、計画どおりに進まなかった場合の費用の扱いを確認しておいてください。
見た目だけ整えば、噛み合わせは気にしなくてもいいですか?
一概には言えません。噛み合わせに問題がなければ、見た目を目的にすることは筋の通った選択です。
一方、噛み合わせに問題がある状態で見た目だけを整えた場合、その問題は残ります。何を目的にするかは本人が決めることですが、残るものが何かは知ったうえで決めるほうが後から迷いません。
部分矯正のほうが後戻りしやすいなら、避けたほうがいいですか?
一概には言えません。傾向として挙げられているだけで、保定を行えば維持できます。
むしろ「短期間で終わるから保定も短くていい」と考えることのほうが、結果に響きます。
まとめ
部分矯正と全体矯正の違いは、動かす歯の本数ではありません。部分矯正は見た目の改善に特化した治療、全体矯正は噛み合わせ(咬合)まで含めて整える治療という違いです。
費用の差はこの違いの結果であって、原因ではありません。だから「安いほうを選ぶ」という判断は、実際には扱う対象を選んでいることになります。
部分矯正は「治療できる歯並びが限られているため、後戻りしやすい傾向がある」とされています。歯はまわりから力を受けて今の位置にいるので、噛み合わせの条件が変わらなければ、引き戻す力は残ります。悪いということではなく、保定の重要度が相対的に高くなるという理解になります。
そして「適応外の歯並びを無理に部分矯正で動かしてしまうと、歯列全体にひずみが生じて、かえって歯並びが悪くなる」とされています。範囲を限るとは、動かさない歯があるということだからです。
一方、噛み合わせに問題がなく前歯の並びだけが気になっているのであれば、部分矯正は条件に合った選択です。期間も費用も軽くなります。
どちらに当たるかは見た目では分かりません。検査とカウンセリングを無料で受けられる医院であれば、費用をかけずに部分で成立するかどうかの確認から始められます。