受け口を治したい。そう思って調べると、マウスピース矯正、ワイヤー矯正、外科手術といった方法が並んで出てきます。
ただ、この一覧をそのまま自分の選択肢だと考えると、話がかみ合わなくなります。受け口の場合、選べる方法の数そのものが人によって違うからです。
決めているのは2つの軸です。原因がどこにあるかと、顎の成長が終わっているか。この2つが決まると、選択肢は自然に絞られます。
受け口の治療法は、2つの軸で決まる
まず全体像を整理します。
| 軸 | 内容 |
|---|---|
| 原因 | 歯の傾きによるもの/顎の大きさや位置によるもの/癖などによるもの |
| 成長 | 顎の成長が残っているか、終わっているか |
原因の分類については反対咬合はマウスピース矯正で治る?3つのタイプと対応できる範囲で詳しく整理しているので、ここでは軸として扱います。
重要なのは2つ目です。受け口は、他の歯並びの問題に比べて年齢の影響が大きいという特徴があります。
成長が残っている間だけ取れる選択肢がある
出っ歯や歯のガタつきは、成人になってからでも子どものときと同じ手立てが使えます。歯を動かす治療だからです。
受け口は事情が違います。顎の位置関係が関わるため、顎が成長している間であれば、その成長の方向に働きかける装置が選択肢に入ります。上顎を前方に引き出す装置などがこれにあたり、骨格に原因がある受け口で用いられることがあります。
この方法は、成長が残っていることが前提です。成長が終わったあとでは、同じ装置を使っても顎の位置は変えられません。
つまり受け口には、成長期にしか取れない道があるということになります。治療法の一覧を眺める前に、自分や子どもがどちらの段階にいるかで、そもそも並ぶ選択肢が変わります。
ただし、これは「早くやらないと取り返しがつかない」という話ではありません。成長のどの時期に何をするかは、顎の成長パターンや原因によって判断が分かれます。時期そのものが診断の対象なので、気づいた時点で相談し、いつ動くかを決めるという順序になります。成長を見ながら経過を追う、という判断もあります。
成長が終わったあとは、2択になる
顎の成長が終わっている場合、方法は大きく2つに分かれます。
歯を動かす
歯の傾きが主な原因である場合、歯の位置を変えることで噛み合わせを改善できることがあります。下の前歯が前に傾いている、上の前歯が内側に倒れている、といったケースです。
この範囲であれば、ワイヤー矯正やマウスピース矯正が選択肢になります。どの装置が使えるかは移動量と方向によって決まり、その考え方は歯科矯正でマウスピースを選べるのはどんなとき?装置の決まり方を解説で整理しています。
骨を動かす
顎の骨の大きさや位置そのものが原因である場合、話が変わります。
はっきり書きますが、このケースでは歯を動かす治療だけでは対応する範囲を超えます。歯を並べても、顎の位置関係は変わりません。無理に歯だけで合わせようとすると、歯を傾けすぎることになったり、見た目の印象が期待と違う結果になったりすることがあります。
適応の範囲を超えるとどう判断されるかについては部分矯正ができない例とは?断られる理由と言われたあとの選択肢でも触れています。
この場合に選択肢となるのが、顎の骨を移動させる手術をともなう治療です。
外科をともなう治療は、矯正歯科だけでは完結しない
ここは知っておくと医院選びが変わる部分です。
手術をともなう治療では、手術そのものは口腔外科が担当し、その前後の矯正は矯正歯科が担当します。歯を動かして手術に備え、手術で顎の位置を変え、その後にもう一度噛み合わせを整える、という流れになります。保定まで含めると年単位の治療になります。
つまり、単独の医院で完結する治療ではなく、連携できる体制があるかどうかが前提になります。
保険が適用される範囲は限定されている
公益社団法人 日本矯正歯科学会の説明によると、矯正歯科治療が保険診療の適用になるのは3つのケースに限られます。
- 厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常
- 前歯および小臼歯の永久歯のうち3歯以上の萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る)
- 顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る)の手術前・後
受け口に関わるのは3つ目です。注意したいのは「手術を必要とするものに限る」という条件で、手術をともなうことが前提になっている点です。手術をせずに矯正だけで治療する場合は、この枠には入りません。
「顎診」の届出があるかは自分で確認できる
もう一点、実務的に重要な情報があります。
同じ学会の説明では、保険診療を行えるのは「厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているもの」として届け出た保険医療機関のみとされています。区分は2種類あります。
- 「矯診」の指定機関 — 上記①②が保険適応
- 「顎診」の指定機関 — 上記③(顎変形症の外科的治療)が保険適応
そして、これらの指定機関は地方厚生局のホームページから検索できます。
外科をともなう治療を保険で受けることを考えている場合、相談先の医院が「顎診」の届出をしているかを、自分で調べられるということです。装置の種類を比べる前に、その医院が外科を含む選択肢を提示できる立場にあるかを確かめておくと、話が早くなります。
なお費用の具体的な水準や医療費控除との関係は、治療内容によって大きく変わるため、診断を受けたうえで見積もりとして確認してください。装置による費用の違いは歯列矯正の費用は装置で決まる|価格差の理由と、表示価格に入らない調整料で整理しています。
自分がどこに当たるかを確かめる
以上を踏まえると、進め方は次のようになります。
検査で原因と成長の段階を確認する。レントゲンなどで顎の骨格と歯の位置関係を見て、原因が歯にあるのか顎にあるのかを判断します。成長期であれば、成長がどの段階かも評価されます。
外科を含む選択肢を出せる医院かを確認する。骨格が原因の可能性がある場合、歯を動かす方法だけを提示されると選択肢が欠けます。相談の際に、外科をともなう方法についてどう考えるかを聞いてみてください。
見た目と噛み合わせのどちらを優先するかを整理しておく。同じ受け口でも、噛みにくさを解消したいのか、横顔の印象を変えたいのかで適する方法が変わります。口元の見え方については下唇が出てるのはなぜ?受け口とは限らない4つの原因と見分け方も参考になります。
通院先を大宮周辺で検討する場合は、通いやすさも判断材料になります。年単位の治療になる場合、通院の負担は無視できません。なお通院の頻度は医院の方式によって差があり、来院を最低1回※からとしている方式もあります。
※通院回数は治療内容・個人の状態により異なります
よくある質問
子どもの受け口は、いつ相談すればいいですか?
気づいた時点で相談し、いつ動くかを診断で決めるのが現実的です。成長期にしか取れない選択肢があるのは事実ですが、開始の時期は顎の成長パターンや原因によって判断が分かれます。すぐ治療を始めるとは限らず、成長を見ながら経過を追うという判断もあります。相談することと治療を始めることは別なので、まず状態を見てもらうところからで構いません。
大人になってからでも治せますか?
治療自体は可能です。ただし成長を利用する方法は使えないため、歯を動かすか、骨を動かすかのどちらかになります。原因が歯の傾きにあれば矯正だけで対応できる範囲があり、顎の位置そのものが原因であれば手術をともなう方法が選択肢になります。
手術は誰でも必要になるのですか?
いいえ。手術が選択肢になるのは、顎の骨の位置や大きさが原因で、歯を動かすだけでは範囲を超える場合です。歯の傾きが主な原因であれば、矯正だけで対応できることがあります。どちらに当たるかは検査で判断されます。
マウスピースだけで治せますか?
対応できる範囲があります。歯の傾きが原因で移動量が大きくない場合などです。一方、骨格に原因がある場合は範囲を超えます。どのタイプなら対応できるかは反対咬合はマウスピース矯正で治る?3つのタイプと対応できる範囲で整理しています。
まとめ
受け口の治療法は、原因がどこにあるかと顎の成長が終わっているかの2つの軸で決まります。方法の一覧を眺める前に、この2つが分かると選択肢が絞られます。
受け口には、成長期にしか取れない選択肢があります。顎の成長に働きかける方法は、成長が残っていることが前提になるためです。ただし開始の時期そのものが診断の対象なので、気づいた時点で相談し、いつ動くかを決めるという順序になります。
成長が終わったあとは、歯を動かすか、骨を動かすかの2択です。歯の傾きが原因なら矯正で対応できる範囲があり、顎の位置そのものが原因であれば、歯を動かす治療では範囲を超えます。
手術をともなう治療は矯正歯科だけでは完結せず、口腔外科との連携が前提になります。保険が適用されるのは限られた3ケースで、うち顎変形症は手術をともなうことが条件です。そして「顎診」の届出をしている医療機関かどうかは、地方厚生局のホームページで自分で確認できます。
まずは検査で、自分がどの軸のどこに当たるかを確かめる。そこが決まれば、比べるべき方法も自然に絞られます。検査とカウンセリングを無料で受けられる医院であれば、費用をかけずにこの確認から始められます。