矯正の費用を調べていると、保険が使えるという話が出てきます。ただ、条件を読んでもよく分からない。自分が当てはまるのかどうかが判断できない。
そういう状態でこのページに来た方が多いと思います。
最初にお伝えしておきたいことがあります。保険が使えるかどうかは、歯並びの悪さでは決まりません。
「重度なら保険が効くのでは」と考える方は多いのですが、その軸は制度上どこにも存在しません。判断されているのは、まったく別のことです。
保険が使えるのは、限られた3つの場合
公益社団法人 日本矯正歯科学会の説明によると、矯正歯科治療が保険診療の適用になるのは次の3つに限られます。
| ケース | 条件 | |
|---|---|---|
| ① | 厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常 | 指定された疾患に該当すること |
| ② | 永久歯萌出不全 | 前歯および小臼歯の永久歯のうち3歯以上の萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る) |
| ③ | 顎変形症 | 顎離断等の手術を必要とするものに限る(手術前・後の矯正歯科治療) |
この3つを並べると、判断している軸がそれぞれ違うことが分かります。
| 入口 | 見ているもの |
|---|---|
| ① | 病名(指定された疾患に該当するか) |
| ② | 歯の萌出状態(生えてきていない歯が3歯以上あるか) |
| ③ | 手術の要否(顎の骨を切る手術が必要と判断されるか) |
どれも「歯並びがどれくらい悪いか」ではありません。
つまり、どんなに歯並びが気になる状態でも、この3つのどれにも当たらなければ自由診療になります。逆に、見た目にはさほど目立たなくても、①に該当すれば対象になり得ます。
① 厚生労働大臣が定める疾患
指定されている疾患は全66項目あります。唇顎口蓋裂、ダウン症候群、ターナー症候群、マルファン症候群、鎖骨頭蓋骨異形成、軟骨形成不全症、外胚葉異形成症、神経線維腫症といった名称が並び、最後に「その他顎・口腔の先天異常」という項目が置かれています。
多くは希少な疾患ですが、一般に見落とされやすい項目がひとつあります。
「6歯以上の先天性部分無歯症」
これは、生まれつき歯が足りない状態を指します。永久歯が6歯以上、もともと作られていないケースです。
ほかの65項目の多くが症候群であるのに対し、これは本人が「自分は病気ではない」と認識していることが多いという点で性質が違います。乳歯が抜けても永久歯が生えてこない、大人になっても乳歯が残っている、といった形で気づかれます。
該当する可能性がある場合、確認する価値があります。
なお、自分がこのリストのどれかに当てはまるかどうかは、診断で判断されるものです。リストの正式な内容は学会や厚生労働省の資料で公開されているため、気になる項目があれば確認してみてください。
② 永久歯萌出不全
こちらは条件が具体的です。
前歯および小臼歯の永久歯のうち3歯以上が生えてこない状態で、それによって噛み合わせに問題が生じている場合です。
ただし限定がついています。「埋伏歯開窓術を必要とするものに限る」とされており、歯ぐきの中に埋まっている歯を出すための処置が必要と判断されることが条件になります。
「歯が生えてこない」だけでは対象になりません。本数の条件と、処置の要否の両方が関わります。
③ 顎変形症
顎の骨の位置や大きさに問題があり、顎の骨を移動させる手術をともなう矯正治療が必要と判断される場合です。
ここも限定が重要です。学会の記載では「顎離断等の手術を必要とするものに限る」とされています。手術をともなうこと自体が条件であり、手術をせずに矯正だけで治療する場合は、この枠には入りません。
受け口(下顎前突)でこの枠に該当することがあります。治療法の選択については受け口の矯正は何で決まる?原因と成長という2つの軸で選択肢が変わるで、保険適用時の負担額を含む費用については受け口の矯正費用は何で決まる?保険が使えるかどうかで桁が変わるで扱っています。
入口によって、相談できる医院が違う
もうひとつ、実務的に重要なことがあります。
保険診療を行えるのは、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして届け出た保険医療機関のみです。しかも、区分が2つに分かれています。
| 区分 | 正式名称 | 対応するケース |
|---|---|---|
| 「矯診」 | 歯科矯正診断料 算定の指定医療機関 | ①② |
| 「顎診」 | 顎口腔機能診断料 算定の指定医療機関 | ③ |
つまり、①②の窓口と③の窓口は別です。自分がどの入口に当たるかを知らないまま医院を探すと、そもそも保険を扱えないところに相談することになります。
そして、これらの指定機関は地方厚生局のホームページから検索できます。保険での治療を考えているなら、相談する前に調べておくと確実です。
該当しない場合は自由診療になる
正直に書いておきます。歯列矯正を受ける方の多くは、この3つのどれにも該当せず、自由診療になります。
見た目を整えたい、歯並びを揃えたいという理由での矯正治療は、保険の対象外です。当サイトで扱っているマウスピース矯正も、自由診療にあたります。
ただし、保険が使えない場合でも医療費控除の対象になり得ることがあります。これは保険とは別の制度で、支払った医療費に応じて所得税の課税対象を減らす仕組みです。噛み合わせなど機能上の理由による治療は対象になり得るとされていますが、治療の目的によって判断されます。
医療費控除の考え方は学生の歯列矯正は分割払いで始められる?「誰が払うか」で総額が変わる3つの理由で扱っています。費用の内訳や総額の見方はマウスピース矯正の値段はいくら?相場と内訳、総額の見方を解説で整理しています。
通院先を大宮周辺で検討する場合は、通いやすさも判断材料になります。なお通院の頻度は医院の方式によって差があり、来院を最低1回※からとしている方式もあります。
※通院回数は治療内容・個人の状態により異なります
よくある質問
歯並びがかなり悪いのですが、保険は使えませんか?
程度の重さは判断の軸に入っていません。保険が適用されるのは前述の3つの場合に限られ、いずれも病名・歯の萌出状態・手術の要否で判断されます。歯並びの見た目や困り具合がどれだけ大きくても、そこは条件になっていません。
自分が該当するかは、どこで分かりますか?
診断で判断されます。①は疾患の診断、②はレントゲンなどで萌出の状態を確認したうえで、③は顎の骨格を評価したうえでの判断になります。自己判断はできないため、まず検査を受けることが確認の第一歩です。
保険が使えれば、費用はどれくらい変わりますか?
ケースによって異なりますが、③の顎変形症では大きな差が出ます。具体的な負担額の目安は受け口の矯正費用は何で決まる?保険が使えるかどうかで桁が変わるで扱っています。
医療費控除と保険適用は同じものですか?
別の制度です。保険適用は治療費そのものが公的医療保険でまかなわれる仕組み、医療費控除は支払った医療費に応じて所得税の課税対象が減る仕組みです。保険が使えない自由診療であっても、医療費控除の対象になり得ることがあります。
まとめ
歯列矯正で保険が使えるのは、①厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常 ②永久歯萌出不全(3歯以上・埋伏歯開窓術を必要とするものに限る) ③顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る)の3つに限られます。
重要なのは、これらがいずれも「歯並びの悪さ」を判断軸にしていないことです。見ているのは病名、歯の萌出状態、手術の要否です。
①の疾患は全66項目あります。多くは希少な疾患ですが、「6歯以上の先天性部分無歯症」のように、本人が病気だと認識していないまま該当しうる項目もあります。
また、保険診療を行えるのは届け出をした医療機関に限られ、①②は「矯診」、③は「顎診」と窓口が分かれています。どちらも地方厚生局のホームページから検索できます。
そして、矯正を受ける方の多くはこの3つに該当せず、自由診療になります。その場合でも医療費控除の対象になり得ることがあり、これは保険とは別の制度です。
自分が該当するかどうかは診断で決まります。検査とカウンセリングを無料で受けられる医院であれば、費用をかけずに現状の確認から始められます。