短期間で歯並びが整う。色も形も選べる。そう聞いて調べ始めたら、「絶対ダメ」という強い否定に出会った。
それで手が止まっている方が多いと思います。
この記事では、その言説を否定も肯定もせずに、まず何をする治療なのかから確認します。そこが分かると、なぜ強く否定されるのかも、どういう場合に適しているのかも、両方が説明できます。
先に結論を書くと、「ダメかどうか」ではなく「目的が違う」という話になります。
「セラミック矯正」は、歯を動かす治療ではない
いちばん重要なのはここです。
| 何をするか | |
|---|---|
| 歯科矯正 | 歯やアゴの骨に力をかけて、ゆっくり歯を動かす。歯並びと噛み合わせを変える |
| セラミック矯正 | 歯を削って、セラミックの被せ物を入れる。見た目を整える |
名前に「矯正」と付いていますが、歯は動いていません。削って、その上に被せ物をかぶせることで、見た目の並びを作っています。
ここから重要な帰結が出ます。歯根の位置は変わりません。
歯は歯ぐきの下に根があり、骨の中に植わっています。削るのは表に出ている部分だけなので、根の位置はそのままです。
治療期間の差も、この違いから来ています。セラミックは2〜3ヶ月程度、場合によっては7日〜10日ほどで終わるとされています。一方、歯科矯正は2ヶ月〜1年、症例によっては3年に及ぶこともあります。歯を動かす時間が要らないぶん、早く終わるわけです。
短期間で終わるというのは、事実です。そこは否定されるところではありません。
「絶対ダメ」と言われる4つの理由
強い否定が出てくる理由を整理します。
① 健康な歯を大きく削ることがある
歯が傾いていたり、ねじれて生えていたりする場合、被せ物で並びを作るには歯の軸をそろえる必要があります。そのために大きく削ることがあります。
削る量は、もともとの歯の位置によって変わります。ずれが大きいほど、削る量も増えます。
② 神経を抜く処置が必要になることがある
削る量が多い場合、歯の神経を抜く処置を行うことがあります。場合によっては抜歯に至ることもあるとされています。
神経を失った歯は、栄養が行き渡りにくくなり、もろくなる傾向があります。将来的に割れたり、根の先に炎症が起きたりするリスクが上がると言われています。
③ およそ10年で作り直しが要る
セラミックの被せ物には寿命があります。およそ10年ほどとされています。
問題は、作り直すたびに土台の天然歯がさらに削られることです。一度削った歯は元に戻らないので、再治療を重ねるほど残る歯は少なくなります。10年ごとに繰り返すと考えると、長い目で見たときの影響が見えてきます。
④ 骨格が原因の問題は改善しない
歯根の位置が変わらないということは、顎の骨の位置関係も変わらないということです。
口元の突出が骨格に由来している場合、被せ物の形を変えても、その原因には届きません。見た目の並びは整っても、望んだ変化にならないことがあります。
4つは、同じ一点から出ている
並べてみると分かりますが、この4つはバラバラの欠点ではありません。
すべて「歯を動かさず、削って被せる」という方式の性質から派生しています。削るから①と②が起き、被せ物だから③があり、根を動かさないから④になります。
つまり、欠点として挙げられているものは、そのまま方式の説明でもあります。
それでもセラミックが適する場面はある
ここは公平に書いておきたいところです。当サイトは矯正を扱っていますが、歯を動かす治療がすべての場面で優れているわけではありません。
次のような場合、セラミックのほうが適していることがあります。
すでに神経のない歯や、大きな詰め物がある歯。もともと削られている歯であれば、①②の問題が当てはまりません。被せ物で形を整えるのは自然な選択になります。
変色していて、色を変えたい歯。ここは重要です。矯正では歯の色は変わりません。位置を動かすだけだからです。色を変えたいのであれば、歯を動かしても目的は果たせません。
欠けた歯や、形に異常がある歯。矯正では歯の形も変えられません。小さすぎる歯や欠けた歯の形を整えるには、足すか被せるかの方法が要ります。
短期間で見た目を整える必要がある場合。事情があって数ヶ月以内に、という条件があるなら、歯を動かす治療では間に合わないことがあります。
歯そのものの大きさや形を変える処置については前歯を削って小さくする費用は?原因で3,000円から100万円まで変わる理由で扱っています。
だから「絶対ダメ」ではなく「目的が違う」
ここまでを整理すると、判断の軸が見えてきます。
| 変えたいもの | 適する方向 |
|---|---|
| 歯の位置 | 歯を動かす治療 |
| 歯の形・色 | 被せる、あるいは足す治療 |
位置を変えたいのにセラミックを選ぶと、削る量が増え、④の限界にも当たります。形や色を変えたいのに矯正を選ぶと、そもそも目的に届きません。
そして、両方が必要な場合もあります。矯正で位置を整えたうえで、色や形が気になる歯だけ被せる、という進め方です。この順序であれば、削る量を抑えられることがあります。
「絶対ダメ」という言い方は、この区別を飛ばしています。方式の性質から出る限界を、治療そのものの否定として語ってしまうと、適している人まで選択肢を失います。
迷ったときに確認すること
判断するために聞いておきたいことを挙げます。
自分が変えたいのは、位置か、形や色か。ここが最初です。両方であれば、順序をどうするかの相談になります。
削る量と、神経を抜く可能性があるか。歯のずれが大きいほど削る量が増えます。神経を抜く見込みがあるかどうかは、始める前に確認してください。
何年で作り直しになる想定か、そのときの費用は誰が負担するか。寿命がある治療なので、次の負担まで含めて考えると総額の見え方が変わります。
骨格が関わっていないか。口元の突出が気になる場合、原因が歯の傾きなのか骨格なのかで、そもそも選べる方法が変わります。判断の考え方は出っ歯はマウスピース矯正で治せる?適応を分けるのは「下げる場所」があるかで扱っています。
噛み合わせがどうなるか。見た目の並びと、上下の噛み合わせは別の軸です。この区別は噛み合わせは矯正で治せる?「歯並び」とは別の軸で見る7つのタイプで整理しています。
なお、範囲を限定した矯正が適応外と判断される場合の考え方は部分矯正ができない例とは?断られる理由と言われたあとの選択肢で扱っています。
通院先を大宮周辺で検討する場合は、通いやすさも判断材料になります。なお通院の頻度は医院の方式によって差があり、来院を最低1回※からとしている方式もあります。
※通院回数は治療内容・個人の状態により異なります
よくある質問
セラミックのほうが早く終わるのは事実ですか?
事実です。歯を動かす時間が要らないため、数週間から3ヶ月程度で終わるとされています。歯科矯正は年単位になることもあります。期間の短さは、この方式の実際の利点です。
判断が分かれるのは、その短さと引き換えに何を差し出すかという点です。削った歯は戻らず、およそ10年で作り直しが要ります。短期の利点と長期の負担を、同じ天秤に載せて考えることになります。
一度セラミックにしたら、あとから矯正できますか?
被せ物が入っている歯を動かすこと自体は可能な場合があります。ただし、被せ物や土台の状態によっては、動かす過程で外れたり壊れたりすることがあります。矯正後に作り直しが必要になることもあります。
順序としては、動かしてから被せるほうが手戻りが少なくなります。両方を考えているなら、始める前に順序を相談してみてください。
前歯2本だけならセラミックでいいのでは?
本数が少なければ削る歯も少なくなるので、範囲としては小さくなります。ただし判断の軸は本数ではなく、変えたいのが位置か形・色かです。
2本の位置がずれている場合、それを被せ物で補うには軸をそろえる必要があり、削る量が増えます。もともと変色や欠けがあるのであれば、本数にかかわらずセラミックが合っています。
「絶対ダメ」と言い切る情報は信用していいですか?
言われている内容自体には、根拠のある部分があります。削る量、神経の処置、寿命、骨格への限界。これらは方式の性質から出るもので、事実として存在します。
ただし、言い切りの形は判断材料になりません。適している場面が実際にあるためです。読むときは「ダメかどうか」ではなく、「なぜそう言われるのか」「自分の目的はどちらか」という形に置き換えると使えます。
まとめ
「セラミック矯正」は名前に矯正と付いていますが、歯を動かす治療ではありません。歯を削って被せ物を入れ、見た目の並びを整える治療です。歯根の位置は変わりません。
「絶対ダメ」と言われる理由は4つあります。①健康な歯を大きく削ることがある ②神経を抜く処置が必要になることがある ③およそ10年で作り直しが要り、そのたびに土台の歯が削られる ④骨格が原因の問題は改善しない。
この4つは、すべて「歯を動かさず、削って被せる」という方式の性質から出ています。
一方で、適している場面もあります。すでに神経のない歯、変色した歯、欠けた歯、形に異常がある歯、短期間で整える必要がある場合です。矯正では歯の色も形も変えられません。目的がそちらにあるなら、歯を動かしても届きません。
つまり、判断の軸は「変えたいのが位置か、形や色か」です。両方であれば、順序を相談する形になります。
「絶対ダメ」という言い切りは、この区別を飛ばしています。なぜそう言われるのかを理解したうえで、自分の目的がどちらにあるかで選ぶほうが、判断としては確実です。検査とカウンセリングを無料で受けられる医院であれば、費用をかけずに自分の状態の確認から始められます。