前歯が大きいことが気になっている。削れば小さくなるはずだから、あとは費用を知りたい。
そういう順序でこのページに来た方が多いと思います。
ただ、この順序には確かめておきたいことがひとつあります。前歯が大きく見える原因は4つあり、削って解決するのはそのうち1つだけだという点です。
そして費用は、原因によって3,000円前後から100万円近くまで幅があります。費用を調べることよりも、原因を確定させることのほうが、最終的な金額をはるかに大きく左右します。
「大きい」には4つの原因がある
前歯が大きく見える理由は、次の4つに分かれます。
| 原因 | 何が起きているか |
|---|---|
| 歯並びが悪くて大きく見える | 歯の向きや位置のせいで大きく見えている。サイズ自体は平均的 |
| 歯そのもののサイズが大きい | 実際に平均より大きい |
| 隣の歯が小さい | 中央の歯は普通でも、隣が小さいと相対的に大きく見える |
| 歯茎が下がっている | 根元が露出し、歯が縦に長く見える |
3つ目は矮小歯(わいしょうし)と呼ばれる状態です。平均より極端に小さい歯のことで、上の前歯の2番目に見られることが多く、結果として中央の歯が大きく見える原因になります。
4つ目は歯肉退縮です。加齢や歯茎へのダメージによって歯茎が下がり、歯の根元が露出することで起こります。
自分がどこに当たるかの目安
サイズの目安としては、横幅が9mmを超えている場合に「前歯のサイズが大きい」と判断されることが一般的とされています。縦の長さの平均は10〜11mm程度で、単4電池の長さ(約10.5mm)とほぼ同じくらいです。
もちろんこれは目安であり、顔全体とのバランスや隣の歯との関係で印象は変わります。ただ、気になっている前歯が実際には平均的なサイズだったというケースは珍しくありません。
削る方法と費用は、桁が変わる
方法ごとの費用を並べます。以下はマウスピース矯正を提供する Oh my teeth が公開している情報によるものです。
| 方法 | 費用の目安 | 削る量 |
|---|---|---|
| 形態修正 | 保険適用なら1歯あたり3,000円前後/審美目的の自由診療で1歯1万〜2万円程度 | — |
| ラミネートベニア | 1本あたり10万〜20万円程度 | 表面を0.3〜0.5mm |
| セラミッククラウン | 1本あたり12万円〜25万円程度 | — |
| IPR(ディスキング) | 1,000円〜5万円程度 | 0.2〜0.5mm程度 |
| 歯列矯正 | 約70〜100万円 | 削らない |
※上記のうち保険適用となる場合を除き、これらは自由診療(保険適用外)です。歯の形を整えたり歯を動かしたりする治療で、費用と期間は症例により異なります。リスク・副作用として、歯を削る処置では知覚過敏や歯の神経への影響、装着物の破損や脱離、再治療が必要になることがあります。矯正では装着中の痛みや違和感、治療期間の延長、治療後の後戻りなどが生じることがあります。また症例によっては適応外と判断される場合があります。
数字を並べると分かるとおり、同じ「前歯を小さくしたい」という希望に対して、3,000円前後から100万円近くまでの幅があります。
この幅を決めているのは、方法の選択ではありません。原因です。歯並びが原因なら削っても解決しないので、削る方法の費用を比べること自体に意味がなくなります。
削るという選択が元に戻せない理由
費用の比較に入る前に、押さえておきたい性質があります。
歯を削ると、削った部分は再生しません。 歯の表面を覆っているエナメル質は、失われても元には戻らない組織です。
Oh my teeth の解説でも、削る治療のリスクとして「神経を抜く処置が必要になり、将来的な歯の寿命を縮めるリスク」が挙げられており、「知覚過敏に悩まされるようになった」という後悔の事例も紹介されています。
ここが重要なところです。元に戻せないということは、「安いほうから順に試す」という進め方ができないということです。
費用を比べていると、いちばん安い方法から始めたくなります。けれど削る処置では、試してみて合わなかったから次を検討する、ということができません。安い選択肢が存在することが、かえって危うさになっている構造です。
原因別に見る、現実的な選択
4つの原因それぞれについて、何が選択肢になるかを整理します。
① 歯並びや角度が原因のとき
歯が前に出ていたり、ねじれていたりすると、正面から見たときに大きく見えます。この場合、歯のサイズは平均的なので、削っても見え方の問題は残ります。
対応するのは位置を変えることです。健康な歯を削らずに、並びを整えることで改善できる場合があります。前に出ていることが原因の場合は出っ歯はマウスピース矯正で治せる?適応を分けるのは「下げる場所」があるかで、前歯だけに範囲を絞る形についてはマウスピース矯正は前歯だけできる?費用・期間と適応の条件を解説で扱っています。
② 本当に歯そのものが大きいとき
横幅が平均を明確に超えていて、位置にも問題がない場合です。
このケースでは、歯を小さくする方法は削ること以外にありません。矯正は歯を動かす治療なので、歯のサイズそのものは変えられません。並びを整えても、大きい歯は大きいままです。
削る量が少なくて済むなら形態修正、形そのものを変えたいならラミネートベニアやセラミックといった選択肢が検討されます。それぞれの適応と、どこまで削るかは診断によります。
③ 隣の歯が小さいとき
矮小歯が原因の場合、大きく見えているほうの歯は平均的なサイズです。
この場合に検討されるのは、大きい歯を削るのではなく、小さい歯のほうを足す方向です。気になっているほうを削ると、今度は全体が小さくなって別のバランスの崩れが出ることがあります。
どちらの歯に手を入れるかで、削る本数も費用も変わります。ここは原因の見立てが結果を大きく変える場面です。
④ 歯茎が下がっているとき
歯肉退縮が原因の場合、歯が長く見えているのは歯茎の位置が変わったからです。
正直に書きますが、この状態は削っても矯正しても元には戻りません。歯を削れば縦の長さは短くできますが、下がった歯茎そのものは戻らないため、根元が露出した状態は残ります。
対応するのは歯周組織の領域で、進行を止めることが優先されます。ここは矯正の守備範囲ではありません。原因がここにある場合、削る費用を調べていても目的には近づかない、ということになります。
費用を確かめる順番
以上を踏まえると、進め方は次の順序になります。
まず原因を確定させる。4つのうちどれなのかで、選択肢も費用の桁も変わります。ここが決まらないまま金額を比べても、比較として成立しません。
削る計画が出てきたら、原因の説明を求める。「小さくしたい」という希望に対して、原因の説明なしに削る方法だけが提示された場合は、なぜその方法なのかを聞いてみてください。元に戻せない処置なので、理由が説明されることは重要です。
複数の方法が示されるかを見る。原因によっては選択肢が1つに絞られますが、その場合も「なぜ他ではないのか」が説明できるはずです。
総額で見る。矯正を選ぶ場合、表示価格に入らない費用があります。装置による価格差と内訳は歯列矯正の費用は装置で決まる|価格差の理由と、表示価格に入らない調整料で、安さをどう判断するかは歯列矯正の「安い」は3種類ある|表示価格・総額・目的に対しての違いで整理しています。
なお、口元全体の印象が気になっている場合は、前歯のサイズ以外の要素も関わります。横顔の基準についてはEラインとは?基準の数値と、矯正で変わる部分・変わらない部分で扱っています。
通院先を大宮周辺で検討する場合は、通いやすさも判断材料になります。なお通院の頻度は医院の方式によって差があり、来院を最低1回※からとしている方式もあります。
※通院回数は治療内容・個人の状態により異なります
よくある質問
自分の前歯が大きいかどうか、自分で測れますか?
おおよその見当はつきます。横幅が9mmを超えているかが一つの目安とされています。ただし、測った数値が平均内でも、隣の歯とのバランスや歯の向きによって大きく見えることがあります。サイズが平均内なら、原因は別のところにあるという判断材料として使うのが現実的です。
少しだけ削るなら安全ですか?
削る量が少ないほど影響は小さくなりますが、削った部分が戻らないことは変わりません。また「少しだけ」で目的の見た目に届くかは、原因によります。位置が原因の場合、少し削っても印象はあまり変わらないことがあります。
削ったあとで矯正することはできますか?
順序としては可能です。ただし、先に矯正で位置を整えてから、それでも気になる部分があれば削るかを判断する、という順序のほうが削る量を抑えられる場合があります。どちらが適するかは原因と状態によるため、両方の選択肢を出せる医院で相談するのが確実です。
保険は使えますか?
形態修正については、保険適用となる場合に1歯あたり3,000円前後という目安が示されています。ただし適用の可否は治療の目的や状態によって判断されるもので、見た目を整えることを目的とした処置は自由診療になるのが一般的です。適用されるかどうかは、診察を受けた歯科医院に確認してください。
まとめ
前歯を削って小さくする費用は、方法によって3,000円前後から数十万円まで幅があります。矯正まで含めると100万円近くになることもあります。
ただし、この幅を決めているのは方法の選択ではなく原因です。前歯が大きく見える理由は、①歯並びで大きく見える ②歯そのものが大きい ③隣の歯が小さい ④歯茎が下がっている、の4つに分かれ、削って解決するのは②だけです。
②に当たる場合は、削る以外に歯を小さくする方法はありません。一方、①なら位置を変える対応になり、③なら小さい歯のほうを足す方向が検討され、④は削っても矯正しても元には戻りません。
そして歯を削る処置は元に戻せないため、安いほうから順に試すという進め方ができません。
費用を調べる前に、自分の「大きい」がどれに当たるかを確かめる。順序としてはそれが先で、そこが決まれば選ぶべき方法も費用の桁も自然に絞られます。検査とカウンセリングを無料で受けられる医院であれば、費用をかけずにこの確認を進められます。