費用を抑えてマウスピース矯正を受けたいと考えたとき、モニター制度は現実的な選択肢のひとつです。ただ、募集ページに並ぶ条件は「当院の基準を満たす方」「症例に適合する方」といった書き方が多く、自分が当てはまるのかどうかを判断しづらいのが実情です。
条件が抽象的に見えるのには理由があります。マウスピース矯正のモニターでは、歯並びの状態と、生活の中で装置を使い続けられるかどうかの両方が見られているからです。どちらも実際に検査や相談をしてみないと確定しません。
ここでは、マウスピース矯正のモニターで求められる条件と、その条件が置かれている理由を整理します。そのうえで、応募できるかどうかを確かめる順番を示します。
なお、モニター契約そのものの仕組みや、写真の使用範囲・途中でやめた場合の清算といった契約面については、矯正のモニターとは?安くなる仕組みと契約前に確認したい5つのことで詳しく取り上げています。あわせてご覧ください。
マウスピース矯正のモニターで求められる主な条件
募集要項に挙げられることが多い条件を整理すると、おおむね次のようになります。
症例が医院の求めるものと合っていること。モニターは医院が症例を蓄積したり広告素材を得たりする目的で募集しているため、求める症例の型があります。
口腔内が健康であること。虫歯や歯周病がないことが条件に挙げられます。理由は後ほど説明します。
装着時間を守れること。マウスピース矯正では、この条件が実質的に大きな意味を持ちます。
写真提供などの協力条件に同意できること。治療前後の記録を提供し、それが公開されることに同意できるかどうかです。
通院スケジュールを守れること。決められた来院に応じられる見通しが求められます。なお通院の頻度は医院の方式によって差があり、事前に全期間分のマウスピースを製作して来院を最低1回※からとしている医院もあります。
※通院回数は治療内容・個人の状態により異なります
このうち協力条件や契約面の確認事項は前掲の記事に譲り、ここではマウスピース矯正ならではの条件を掘り下げます。
適応は二段階で絞られる
「応募したけれど対象外だった」ということが起きやすいのは、絞り込みが二段階になっているためです。
第1段階:マウスピース矯正で対応できる歯並びか
まず、そもそもマウスピース矯正という治療法が適しているかどうかが判断されます。マウスピース矯正は透明な装置で少しずつ歯を動かす方法ですが、対応できる範囲には限りがあります。
歯を大きく動かす必要がある場合、顎の骨格そのものに原因がある出っ歯や受け口、重度の歯周病がある場合などは、マウスピース矯正では難しいことがあります。奥歯の噛み合わせが安定しているかどうかも、判断の分かれ目になります。
逆に対応しやすいとされるのは、前歯の軽度なガタつき、前歯のすき間、歯の傾きが原因の軽度の出っ歯、そして過去に矯正した歯が元に戻ってしまった後戻りです。いずれも動かす距離が比較的短く、必要なスペースをわずかな調整で確保できる範囲であれば、治療計画が立てやすくなります。
ただし「軽度」の線引きは見た目の印象では決まりません。歯の重なり具合や必要な移動量をレントゲンとスキャンで測ったうえで判断されるため、鏡を見て自己判断することはできない領域です。
前歯を中心とした矯正で対応できる範囲については、マウスピース矯正は前歯だけできる?費用・期間と適応の条件を解説で詳しく取り上げています。
第2段階:その医院がモニターとして求める症例に合うか
第1段階を通過しても、モニター枠に入れるとは限りません。医院側には「どういう症例を記録として残したいか」という意図があるためです。
たとえば特定の治療法の症例を集めている場合、その方法が適する歯並びであることが条件になります。募集の枠に人数の上限が設けられていることもあります。
つまり、マウスピース矯正を受けられる状態であっても、モニターの対象にはならない場合があるということです。落選が実力や口腔内の問題を意味するとは限りません。
装着時間の自己管理が選考に関わる理由
マウスピース矯正のモニターを考えるうえで、もっとも押さえておきたいのがこの点です。
マウスピース矯正では、1日20〜22時間の装着が前提とされています。食事と歯みがきのとき以外は着けたままで過ごすことになり、装着時間が不足すると計画どおりに歯が動きません。期間が延びたり、装置を作り直すことになったりする場合があります。
ここに、ワイヤー矯正にはない性質があります。ワイヤー矯正は装置が歯に固定されているため、力のかかり方は患者の行動にあまり左右されません。一方でマウスピース矯正は、治療結果が使う人の管理にかなりの部分を委ねられています。
医院がモニターを募集するのは、その症例を記録として残すためです。治療が計画どおりに進まなければ、記録としての価値も下がります。そのため募集にあたっては、装着時間を守れる見通しがあるかどうかが自然と重視されることになります。
相談の場で生活スタイルを尋ねられることがあるのは、このためです。食事や間食の回数、人と話す時間の長さ、外出の多さといった要素は、装着時間を確保できるかに関わってきます。接客業や営業職のように会話の多い仕事であれば、どのタイミングで外し、いつ着け直すかを具体的に考えておくと、相談もしやすくなります。
これは応募のハードルというより、始めてから無理が出ないかを事前に確認する工程と捉えるほうが実態に近いといえます。
口腔内が健康であることが条件になる理由
虫歯や歯周病がないことが条件に挙がるのは、マウスピースという装置の性質によるものです。
マウスピースは歯列全体を覆って使います。装着している間、歯の表面は装置に包まれた状態になり、唾液が歯に触れにくくなります。唾液には口の中を洗い流したり、酸を中和したりする働きがあるため、覆われている時間が長いほどその働きが届きにくくなります。
1日20時間以上という装着時間を考えると、この状態が一日の大半を占めることになります。虫歯や歯周病がある状態で始めると、治療中に状態が進んでしまう可能性があります。
そのため、矯正を始める前に虫歯や歯周病の治療を済ませておくよう求められるのが一般的です。これはモニターに限った話ではなく、マウスピース矯正全般に共通する前提ですが、モニターの場合は選考の要素として明示されることがあります。
虫歯があるからといって諦める必要はありません。先に治療を済ませれば条件を満たせる場合が多いため、現状を確認するところから始めれば十分です。
症例提供で求められる記録の内容
モニターというと治療前後の写真を2枚提供するイメージを持たれがちですが、マウスピース矯正では少し事情が異なります。
マウスピース矯正は、少しずつ形の違う装置に交換しながら段階的に歯を動かしていきます。そのため症例としての価値は、変化の過程そのものにあります。定期的な口腔内写真の撮影や、装着状況の報告を求められることがあるのはこのためです。
協力の頻度や期間は医院によって異なります。どのタイミングで何を提供するのか、それがどのくらいの手間になるのかは、応募する前に確認しておきたいところです。
提供した写真や情報がどの媒体でどこまで使われるか、後から取り下げられるかといった点は、契約内容として押さえておく必要があります。この点は矯正のモニターとは?安くなる仕組みと契約前に確認したい5つのことで整理しています。
モニターに応募するか迷ったときの進め方
ここまで見てきたとおり、応募できるかどうかを左右する要素の多くは、検査を受けなければ確定しません。歯並びがマウスピース矯正の適応にあたるか、口腔内に治療すべき箇所があるか、いずれも自己判断はできない領域です。
そこで、次の順番で進めるのが現実的です。
まず適応判定を受ける。自分の歯並びがマウスピース矯正で対応できる範囲か、治療の必要な虫歯や歯周病がないかを確認します。この段階では、モニターに応募するかどうかを決めておく必要はありません。
次に、モニターと通常料金を比較する。適応が確認できたら、モニターの条件を満たせそうか、協力内容が自分の生活に無理なく収まるかを検討します。そのうえで通常料金の場合の総額と比べれば、どちらが自分に合うかを判断できます。
精密検査やカウンセリングを無料としている医院であれば、この順番を費用をかけずに踏めます。適応だけ確認して持ち帰り、落ち着いて考えるという進め方も可能です。
モニターに応募しない場合でも、費用の見通しを立てる方法はあります。治療完了までの費用が最初に総額で確定する料金体系を選ぶ、分割払いを利用する、範囲を絞った部分矯正が適応になるか相談する、といった選択肢です。費用の相場と内訳についてはマウスピース矯正の値段はいくら?相場と内訳、総額の見方を解説にまとめています。
通院先を大宮周辺で検討する場合は、通勤や生活の導線上にあるかどうかも判断材料になります。装着時間の管理を続けながら通院も重ねることを考えると、通いやすさは継続に直結します。
よくある質問
虫歯があるとモニターに応募できませんか?
その時点では条件を満たさないことがありますが、先に虫歯の治療を済ませれば応募できる場合が多くあります。マウスピースは歯を覆って長時間使うため、口腔内を整えてから始めるのが前提になっています。まず現状を確認するところから始めてください。
装着時間を守れなかったらどうなりますか?
歯が計画どおりに動かず、治療期間が延びたり装置を作り直すことになったりする場合があります。モニター契約では協力条件に関わる可能性もあるため、条件の内容を事前に確認しておくと安心です。生活の中で装着時間を確保できるかは、相談の段階で具体的に話しておくとよいでしょう。
モニターに選ばれなかった場合はどうすればいいですか?
モニター枠は医院が求める症例や募集人数に左右されるため、選ばれないことが歯並びの問題を意味するとは限りません。通常料金での治療のほか、総額が最初に確定する料金体系を選ぶ、分割払いを利用する、範囲を絞った部分矯正を検討するといった方法があります。
顔を出さずにモニターになれますか?
口元のみの撮影を条件とする募集もあります。ただし顔が分かる形での掲載に比べて割引の幅は小さくなる傾向があります。どこまでなら同意できるかを決めたうえで、その条件で受けられるかを確認してください。
まとめ
マウスピース矯正のモニターでは、歯並びがマウスピース矯正の適応にあたるかという第1段階と、その医院が求める症例に合うかという第2段階の、二つの絞り込みがあります。マウスピース矯正が可能でもモニター枠には合わないことがあるのは、この構造によるものです。
加えてマウスピース矯正では、1日20〜22時間という装着時間を守れるかが治療結果を左右します。症例として記録を残す前提で募集されているため、この自己管理ができる見通しがあるかどうかが自然と重視されます。
いずれも検査と相談を経なければ確定しません。まず適応判定を受け、そのうえでモニターに応募するか通常料金で受けるかを比較する。この順番で進めれば、情報だけで悩み続けずに判断できます。